休暇をもらい、故郷の母に会いに行こうとするひとりの兵士が、 ふとしたことで悪魔に魂を奪われてしまいます。
彼は心(ヴァイオリン)を悪魔に渡し、そのかわりにお金や物、なんでも手に入れることが出来るという、奇妙な本をもらいます。
兵士はこの本によって、この世でくらべるもののないくらい大金持ちになります。 しかも、ある国の王女を嫁にする、というような幸せな日々が続きます。
しかし、兵士の心のなかでは、癒されないものを感じ始めます。 いまの幸せだけでなく、貧しかった時代の、あの幸福も忘れられない。 母と一緒に暮らせば、過去と現在のふたつの幸せを手にすることが出来るに違いない。彼はお姫様とふたりで自分の生まれ故郷の村を目指します。
故郷の土を踏もうと、まさに国境を越えんとした途端、悪魔が現れたのです。そうです、ふたつの幸せなど、ありえないのです。
ひとつの幸せを大事にする心がなくて、幸せなんてありえましょうか。兵士は再び悪魔の手の中に引き戻されます。
悪魔がヴァイオリンを奪い取り、誇らしげに≪悪魔の勝利の行進曲≫を弾きます。兵士はうなだれながら、悪魔のあとを、足をひきずりながらついてゆきます。お姫様をあとに残し、悪魔に連れ去られていくのでありました。